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【創業融資支援】
〇決算書(貸借対照表や損益計算書)等の財務資料の実績を基に判断する一般企業向けの融資審査とは異なり、
「創業者」は事業開始前または開始間もないので、審査するにしても十分な資料や実績がありません。
そこで、創業者でも融資を受けられるかどうかの判断は、以下のことを総合的に審査して銀行が判断します。
①自己資金はいくらあるか?
②事業計画は現実的なものか?
③資金計画はできているか?
④返済計画に実現性はあるか?
⑤担保や保証人は存在するか?
優良資産を持つ保証人がいる、担保価値のある不動産がある、などの場合は創業期でも有利に融資を受けられる可能性は高いでしょう。 しかし創業を控えているほとんどの方は、担保や保証人を用意できない状態です。
そういう方でも融資を受けることができるのが、
「日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資」や
「都道府県、市区町村等の自治体制度融資」です。
創業者が融資を受けるにはまず「自己資金」を用意することが重要です。
「自己資金」は担保も保証人も実績もない創業者に対する銀行にとってのリスクヘッジの要件となります。
自己資金がゼロの場合、前述の日本政策金融公庫や自治体制度融資を活用したところで「無担保・無保証人」では、融資審査のハードルもかなり高くなります。
次に重要なのは「創業計画書」です。
創業する事業概要を説明するための事業計画書・資金計画書を作成し、銀行に事業の将来性を認めてもらう必要があります。
自己資金について
創業融資を申請するに当たり「自己資金」は非常に重要です。
昨今では、日本政策金融公庫や自治体制度融資の創業融資の要件は、自己資金の要件についてのハードルを下げつつあったり、要件自体を廃止したりするなど、自己資金の申請要件の重要度が下がってきていますが、それはあくまでも申込要件としてのハードルが下がっているだけであり、依然として審査上では重要なポイントとなっています。
自己資金とは、その事業に投資する予定の自己所有の資金を指しますので、その事業に投資する予定ではない他の資金は自己資金には含まれません。
銀行や保証協会は、創業融資審査において自己資金を非常に厳しく調査します。
会社員時代の給与が少しずつ貯まっていく通帳であれば純然たる自己資金と認められますが、消費者金融や友人・知人から一時的に借りたお金を自己資金だと主張しても、それは見せ金であり基本的に通用しません。
また、タンス預金と言われる現金で自宅に貯めているケースもありますが、預貯金通帳があるわけではありませんので、客観的に証明する手立てが存在しません。
第三者を納得させられる証拠資料がない限り自己資金としては疑義ありとして否決されるケースがあります。
このように「自己資金」には非常に厳しい審査判断がなされています。
ほかに自己資金として認められるケースとしては、
・株式投資で、所有する株式を換金して自己資金としたケース
・保険解約して解約返戻金を自己資金としたケース
・所有する自動車等の財産の売却資金を自己資金としたケース
・相続財産を承継して得た資金を自己資金としたケース
など、もとは自分の財産なので自己資金としては認められますが、現金化した際の領収書や契約書等の証明書類は提出しなければならないので保存しておくべきです。
上記のような資金も自己資金として認められるのは確かですが、創業の本気度を示す要素としては、やはり創業のために自らコツコツと資金を貯めて準備してきた経緯が分かるような自己資金の用意の仕方が、最も銀行が審査要件として好むケースと言えます。
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A.【日本政策金融公庫の活用について】
日本政策金融公庫は創業者が利用する金融機関としては最適でしょう。
日本政策金融公庫には、創業専用相談ダイヤル「創業ホットライン」や無料の創業相談「ビジネスサポートプラザ」を設置し、創業者の支援を積極的に行っています。
日本政策金融公庫の創業に関する主要な融資制度として、以下に説明します。
〇新規開業資金:創業関連融資の基本となる制度です。
これから新規に開業する方、条件を満たした方のうち事業開始後おおむね7年以内である方が対象です。
こちらは担保・保証人が原則必要となりますので、担保や保証人を用意できる方はこの制度を利用してより多くの金額の融資を受けられます。
・融資限度額:7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内)
・返済期間:設備資金~20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金~10年以内(うち据置期間5年以内)
〇創業融資制度:新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。
原則、担保・保証人が不要で各種融資制度を利用できる融資です。
また、原則基準利率より0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)引下げとなります。
この制度を利用するための事業計画をシッカリと作成し提出すれば、無担保・無保証人で融資を受けられることができます。
・返済期間:設備資金~20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金~10年以内(うち据置期間5年以内)
※前述の新規開業資金を利用した場合に適用されます。
・自己資金:かつては、総所要資金の「3分の1以上」~H26年に要件変更「10分の1以上」となっていましたが、
現在この要件は廃止されています(R6.3.31)。
ただし、あくまでも融資申込に関しては自己資金要件が無いという形式上のものであり、現実の融資審査において「自己資金」を準備しているかどうかは依然として重要なポイントです。
創業者の方は、創業融資をスムーズに受けるためには「自己資金」を少しでも多く準備するという点では従来と変わりません。
審査の現場では、総所要資金の30%以上の自己資金が理想と考えています。
〇創業計画書の作成について:日本政策金融公庫の創業計画書ダウンロードは、以下参照。
http://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
創業計画書の各項目
1.創業の動機
日本政策金融公庫の担当者が見て内容を即座に理解できるように分かりやすく書きましょう。
創業の動機は、創業者にとっては大いなる決断と勇気と自信をもって臨む「決意表明」です。
少ないスペースで書ききれない場合もありますので「別紙参照」という形でword等で作成し添付するほうがベターです。
2.経営者の略歴
経歴書の要領で会社名や勤務年数を書きます。
具体的にその会社のどんな地位でどんな仕事に従事し、どんなことを習得してきたのか、創業にあたりそれらをどのように活
かすことができるのか、などアピールポイントを書きましょう。
1.同様にスペースに書ききれない場合はword等で別紙参照として添付します。
3.①商品・サービスの内容
以下のような具体的な内容を書きます。
・品揃え(種類が豊富、特化した商品など)
・品質(国産のみ、輸入ブランドなど)
・ターゲット顧客(性別、年代、地域など)
・価格帯(低価・廉価、高価商品など)
・競合比較(価格、品揃え、品質など)
②セールスポイント
事業の「強み」を具体的にアピールしましょう。
セールスポイントを書く際は「6W2H」などのフレームワークで整理します。
・Who(誰が):組織・人員・採用計画により担当者をハッキリと決めて行動。
・Whom(誰に):ターゲット顧客層(メインターゲット、サブターゲット)
・What(何を):商品・サービス(事業の強みを活かした差別化)
・When(いつ):担当者の行動の期間・期限、営業時間帯・季節による差別化など
・Where(どこで):地域的、立地条件による戦略、戦術など
・Why(なぜ?):対象顧客ニーズ、地域的ニーズなど
・How to(どのように):販売方法、生産体制、物流システムなど
・How much(いくらで):販売価格帯、仕入価格など
4.取引先・取引条件など
すでに決まっている、または予定している販売先、仕入先を記載します。
ここで日本政策金融公庫が知りたいポイントは、販売先からの回収条件と仕入先への支払条件を確認し、その会社の資金繰り状況を予測することです。
支払サイトが早く、回収サイトが遅ければ、資金繰りはタイトな状態になります。
逆に支払サイトが遅く、回収サイトが早ければ、資金繰りに余裕ができます。
もう1つの確認したいポイントは、その申込んでいる融資額が必要なのか?その金額が妥当なのか?という点です。
その業態が現金主義で資金繰りは良いはずなのに運転資金で融資の申し込みがあった場合、実は赤字補填の資金かも?と予測したりします。
創業計画書は、資金計画書や損益計画書とリンクする内容になっているようにしましょう。
①販売先:顧客が企業(BtoB)であれば、確定している取引先の会社名・所在地・取引条件等を記載し、顧客が一般の個人(BtoC)であれば、一般個人と記載します。
②仕入先・外注先:原材料等の仕入先・外注先の会社名・所在地・取引条件等を記載します。
5.従業員
常勤の役員、社員、パート・アルバイトをそれぞれ記載します。
創業計画書の「人件費」の内容とリンクしているか確認しましょう。
6.お借入れの状況
住宅、自動車、カード、教育、消費者の各ローンなど、事業資金以外の個人的借入内容を記載します。
日本政策金融公庫は、個人信用情報(CIC)を確認し個人借入状況をすべて把握していますので、誤魔化しは通用しません。
担当者の心証を悪くしないように誠実に記載しましょう。
7.必要な資金と調達方法
ここでの確認ポイントは「資金使途」です。創業計画書の中で特に重要な部分です。
①設備資金:事業を行う上で必要な設備とその金額です。
購入してしまっている場合はその金額、これから購入予定のものはカタログ・パンフレット・見積書等の金額を記載します。
例~店舗購入費、内外装工事費、賃貸契約保証金、備品(什器、事務機器一式)など。
②運転資金:事業が稼働した際の運転資金の額です。
創業当初の経費として、支払サイトと入金サイトを考慮して金額を決定します。
一般的に運転資金の3ヶ月分程度が融資してもらえる金額と言われています。
③自己資金:自己資金として持っている金額ですが、あくまでも事業に投資する分の金額です。
現金・預貯金として所有する金額および設備資金や運転資金の一部としてすでに支払っているものがあれば、その金額も含めて記載します。
④親、兄弟、友人・知人等からの借入:その借入金額および返済方法を記載します。
この金額はあくまでも借りている資金ですから、自己資金には含まれません。
⑤日本政策金融公庫(国民生活事業)からの借入:まさに今回の事業に必要な分の融資申込金額です。
創業融資は、各制度ごとに借入限度額が設定されており、その上限の範囲内で金額を記載します。
⑥他の金融機関からの借入:日本政策金融公庫以外の金融機関からの借入ですが、これも事業に必要な分のみの金額です。
8.事業の見通し
ここでの確認ポイントは「返済財源」です。
ここも非常に重要なポイントです。
創業当初の収支がマイナスであることは問題ありませんが、軌道に乗った後の収支においては返済可能な利益(キャッシュフロー:CF)が出て、返済額を上回るような損益計画書が必要です。
日本政策金融公庫の「創業計画書」は非常にシンプルなものです。
この資料のみを作成しただけでは、創業者の方は事業アピールには不十分に感じられるかもしれません。
そのため、できれば「補足資料」を用意することが大切です。
特に数値計画の部分については、下記の添付資料を準備します。
これらの資料を添付することで、創業融資を受けられる可能性は格段に高まります。
・創業計画概要書
・3ヵ年の損益計画書
・3年分の月次損益計画書
・月次の資金繰り予定表
・商流図(ビジネスフロー図)
・SWOTクロス分析表
・取引金融機関一覧表
B.【自治体制度融資の活用について】
もう1つの創業者の資金調達手段として利用されているのは「自治体の制度融資」です。
自治体の制度融資は、各自治体により貸付限度額、返済期間、利率などの条件が異なります。
自治体によりますが、信用保証協会の「保証料の補助」や「利息の一部負担(利子補給)」などを用意していたりと、創業者の負担軽減を行っている制度もあります。
〇自治体の制度融資の「創業計画書」作成のポイント
各自治体によって書式が異なりますが、日本政策金融公庫の創業計画書に記載する内容とほぼ同じになっています。
ここでは、日本政策金融公庫の創業計画書とは異なる部分を説明します。
1.単位が「千円」:日本政策金融公庫の創業計画書の単位は「万円」となっています。
一般的に金融機関(銀行)に提出する資料の単位は「千円」ですので、こちらの部分のほうが馴染みやすいかもしれませんね。
2.収支計画:多くの制度融資の創業計画書では「創業当初」と「軌道に乗った後」の数字は「年間の数字」の記載です。
日本政策金融公庫の創業計画書では、それぞれの「月平均の数字」を記載しますので、この部分が異なるところです。
各自治体により創業計画書の様式は様々ですが、日本政策金融公庫の場合と同様、数値計画のしっかりした補足資料(創業計画概要書、3ヵ年の損益計画書、3年分の月次損益計画書、月次資金繰り予定表など)を準備することが大切でしょう。
3.自己資金の算定表:この項目は、日本政策金融公庫の「お借入状況」に当たります。
ここには、自己資金の金額および個人の借入状況とその2年分の返済額を記載するような形式となっています。
4.自治体の制度融資を選ぶメリット:主に市区町村の制度融資は「保証料の補助」や「利子補給」があることが多く、資金面での経済的負担が軽減される調達方法です。
自治体によっては利率1.0%以下で借入できる場合もあり、創業者にとっては経済的に助かる制度です。
この特典が適用される場合は、その自治体の斡旋書が必要です。
斡旋書をもらうために1か月以上かかるケースもありますので、多少手続きや時間がかかります。
創業予定日までに時間的余裕がない場合は、選択しないほうが良いということもあります。


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