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【資金繰り改善・経営改善・資金調達】
●資金繰り管理は、なぜ重要なのでしょうか?
▷会社が生きるか、死ぬか、は損益状況ではありません。「資金繰り次第」です。
・企業はどんなに損益状況が赤字でも「資金繰り」が回っている間は潰れません。
逆に、損益状況がどんなに黒字でも「資金繰り」が詰まれば、潰れるのです。
▷会社が存続するかしないかは、損益状況が黒字か赤字かの問題ではありません。
・会社の存続の要は、"資金繰りが回っているかどうか?”です。
損益状況がどんなに赤字でも、銀行からの融資、親族・知人からの借入れ、会社資産の売却、投資家からの出資など、資金調達ができて資金繰りが回っている間は存続することができます。逆に、損益状況が黒字であっても、月々の資金繰りが回らなければ、潰れてしまいます。
●中小企業においては、厳しい経営環境がまだまだ続きます。
▷この厳しい経営環境が続く状況下においてなお力強く生き抜いていくためには?
・売上至上主義(売上高、売上総利益)
・外部依存からの脱却
・利益重視(営業利益、経常利益)
・キャッシュフロー(営業CF)
を意識した経営体制を築いていかなければなりません。
そのためには「資金繰り管理」を理解し、経営に活かしていくことが不可欠です。
●資金繰り管理のための「資金繰り表」は会社の余命表です。
▷資金ショートは、会社の「死」を意味する。
・会社の余命はいつまでもつのか?
何も手を打たずこのままの状態ならいつまで資金は回るのか?
もし資金繰り表を作っていないなら、会社の余命がいつまでもつのか知ることはできません。
直前になって月末の資金が足りないという事態になれば、それは会社の突然死を招きます。
ただ「資金繰りの管理」をしていれば、このような事態は避けられます。
日頃から資金繰り管理ををしっかりと行い、資金不足の時期を前もって把握することができる体制を作っ
ておくことが大切です。
・もし資金ショート発生の可能性を予見できた場合でも、早い段階で資金不足の時期を知ることができれば、経営者も心と時間に余裕をもって対応ができるでしょう。
・資金ショートのXデーまでに余裕をもって銀行に融資相談もできます。
・支払の優先順位の変更を検討することもできます。
・売上入金を早めるために相手方と交渉することもできるでしょう。
・Xデーまでに入金できる売上を確保するための営業戦略を仕掛けることもできます。
・3~6か月程の近い将来の資金繰り状況を把握できれば、それだけ対応策を練ることも可能でしょう。
●資金繰り表とは?
▷現金・預金の入金・出金を管理する資料です。
・過去の現金・預金の動きを把握することができる資料が「実績資金繰り表」です。
・未来(3ヶ月程の近い将来)の動きを予測する資料が「予測資金繰り表」です。
・資金繰り表を作る目的としては、過去の動きを確認することも大切ですが、未来の動き
を予測するほうが重要です。「予測資金繰り表」を作り、ある一定の期間の出入金の状況を科目別に予測集計し、将来の現金の過不足を把握します。
●資金繰り表を作る「目的」とは?
▷これから先、現金が増えるのか?減るのか?減るとしたら支払に足りなくなるレベルにまで減ってしまうのか?その時期はいつ頃になるのか?を事前に把握しておくためです。
・会社は損益状況が黒字・赤字で倒産するものではなく、資金が不足することによって倒産します。
・資金繰り表を作ってみて、もし3~6か月後に支払が不足するレベルまで資金が減ってしまう状況なら、資金ショートつまり資金繰りが破綻するということです。会社の寿命が尽きることを意味しています。
▷資金ショートへの対策は?
・資金ショートのタイミングが予測された場合、大至急その対策を考え、資金ショートを回避しなければなりません。
・資金繰り予定表を日頃から作っておけば、いつ頃・幾らぐらい資金が不足するかを予測できますので、余裕をもって対策を立てることができます。
・一寸先は闇とは使い古された言葉ですが会社経営には打ってつけの言葉かもしれません。資金繰り表は、少し先の未来を見るためのツールです。資金繰りの管理をすることは、一寸先の真っ暗な闇を明るく照らしてくれる、まさに懐中電灯のような役割を果たす格好の道具と言えます。
●資金繰り表を作る際のポイントは?
▷決算書の損益計算書と「資金繰り表」との最大の違いは、損益計算書が「発生主義」であるのに対し、資金繰り表は「現金主義」の出入金ベースで作成するところです。
・減価償却費のような会計上のみの処理で実際に現預金が動かないものは資金繰り表には反映されません。
・売上が幾ら上がったとしても実際に売上金の入金が無ければ、資金繰り上の収入にはなりません。
・支払手形を切っていたとしても手形期日になって実際に当座口座から落とされるまでは、資金繰り上の支出にはなりません。
・諸経費が発生していても未払の状態である場合には、資金繰り上の支出にはなりません。
・資金繰り表の作成は、資金ショートを発生させないように将来のキャッシュフローを把握し、未来に対していつ・いくら資金が不足するのか?を予測し、事前に対策を立て行動していくことが出発点です。
・会社の将来の資金動向を把握しつつ、資金ショートを回避し現預金を増やしていくようにすることが、ひいては会社の安定的存続を可能にします。
●資金繰り表の3つの構成「経常収支」「設備収支」「財務収支」
▷資金繰り表には、経常収支・設備収支・財務収支の3つの収支があります。
・各々の収支を加え、最終的な「合計収支」がどのように推移するかを把握します。
・経常収支は、会社の事業が行われた結果、売上入金(経常収入)により幾らの資金を得、経費等の支払(経常支出)により幾らの資金が出て行ったのかを表します。営業活動の収支を表し、会社の経営状態を表しています。
Ⅰ《 経常収支 = 経常収入 ー 経常支出 》
・設備収支は、会社が設備投資を行うことで資金が流出(設備支出)したり、逆に設備を売却することで、資金が流入(設備収入)するなど、設備等に関する資金の収支を表します。
Ⅱ《 設備収支 = 設備収入 ー 設備支出 》
・財務収支は、金融機関等から融資(財務収入)を受けたり、その返済(財務支出)をしたり、また役員から資金を融通(財務収入)してもらったり、またその返済(財務支出)をしたりした結果の収支を表しています。
Ⅲ《 財務収支 = 財務収入 ー 財務支出 》
Ⅳ《 合計収支 = Ⅰ + Ⅱ + Ⅲ 》
●実績資金繰り表の作成
▷実績資金繰り表は、過去の資金繰りの実績を示す資金繰り表です。
・実績資金繰り表を作成するために必要な資料は次のとおり。
①.現金出納帳
②.預金出納帳、預金通帳
③.手形帳(受取手形帳、支払手形帳)
④.借入金返済明細
⑤.月次試算表(確認用)
・経常収入に計上
上記資料から売上入金・雑収入等の金額を抽出し、経常収入の欄に記載。
・経常支出に計上
上記資料からその月に支払った仕入代金・経費等の金額を抽出し、経常支出の欄に記載。
・財務収入と財務支出に計上
上記資料から借入金入金・固定性預金払出等の金額を抽出し、財務収入の欄に記載。
同じく借入金返済・固定性預金預入等の金額を抽出し、財務支出の欄に記載。
●予測資金繰り表の作成
▷予測資金繰り表は、未来の資金繰りの見込みを示す資金繰り表です。
・未来の資金繰り見込みを把握するために求められる資料であり、事業計画書として添付するものも予測資金繰り表です。
・予測資金繰り表を作成するについては未来予想をしなければなりませんので、月次の損益計算書を作成しなければなりません。それを資金繰り表に落とし込んでいくためのポイント(下記)を確認しながら、作成に反映していきます。
①.取引条件を確認:売上金入金のタイミングと仕入・経費等の支払のタイミングを確認し、その条件に合
わせて損益計算書の数字を資金繰り表に反映させて記載します。
②.支払利息と元金返済の金額を記載:金融機関から発行される借入金返済明細書から、支払利息額と元金
返済額を確認し、それぞれ記載します。
③.損益計算書には表れない出入金を確認:借入予定や設備購入、税金支払、未払金の支払など、損益計画
には表記されないもので発生する出入金について記載します。
④.その他:年払いの保険料、再リース料などの年一度の支払のものを計上し忘れないように、保険契約書
やリース契約書等の契約書類一式を確認し漏れなく記載します。
●資金繰り改善の大原則は「入りを早めて、出を遅く」
▷資金繰りを上手に回す大原則は「入りを早めて、出を遅く」
次の対策により実現させます。
①.売上金の回収サイトを短く(早く)する~経常収支(売掛金)
②.仕入等の支払サイトを長く(遅く)する~経常収支(買掛金)
③.在庫を削減する~経常収支(棚卸資産)
④.借入をおこす~財務収支(短期借入金、長期借入金)
⑤.資産を流動化・現金化する~財務収支・設備収支(設備売却、定期預金払出等)
⑥.増資する~財務収支(株式、出資金)
⑦.適切な節税をする~経常収支(納税)
以上7つのポイントを会社の状況に合わせて適正にしていくことで資金繰りを改善します。
・上記2,4について:資金が増えることで資金繰り的にはプラス作用がありますが、一方で2は支払先の相手方(取引先)からの評判を落とす可能性があります。
・また、4は無計画に行うと借入金過多となり、返って自社の首を絞めることにもなり得ますので、双方とも計画的に且つ適度に行う必要があります。
▷それでは、上記対策1~7のポイントを具体的に見ていきましょう。
①.売上金の回収サイトを短く(早く)する。
▷商品を売ってから売上金を回収するまでの期間を短縮する「入りを早める」ことです。
飲食店や小売店のように、商品提供と同時に代金支払いが行われるビジネスもあれば、卸売業・製造業・建設業など、仕事を完了してから売上金回収までに1か月以上かかるビジネスもあります。
BtoBビジネスの場合「掛け取引」が一般的商慣習として成立しており、売り上げてから売上金を回収するまでに相当な期間が掛かることが一般的です。業界によっては、銀行振込決済ではなく手形決済のケースもあり、請求書を送付してから現金として手元に入るまでに数か月も掛かる場合もあります。
売掛金や受取手形の状態のままでは、この間現実に入金がないことになりますが、仕入先や外注先への支払は発生し続けますので、自社が立て替えて支払う状況になり、資金繰りが悪化する原因となります。このように、売上に対する代金回収の期間が長引けばそれだけ資金繰りが悪くなるということです。
資金繰りを良くするには、回収は現金(手形ではなく銀行振込)、そして回収サイトはなるべく短く(早く)が大原則です。理想は、支払サイトよりも回収サイトのほうが短ければ回収資金で仕入代金の支払いができますので、理論上は銀行融資に頼らず資金を回せます。
②.仕入等の支払サイトを長く(遅く)する。
▷仕入品を買ってから現金を支払うまでの期間を延長する「出を遅く」することです。
一般的には、商品を先に仕入れてから売りますので、入金と支払のタイミングは「支払が先で、入金が後になる」ことが多いでしょう。
そのためには、先払い(立替払い)となる運転資金が必要になります。このタイミングをもしも逆転させることができれば、先に現金を受け取ってから、その現金で仕入代金や外注費を支払えばよいので、資金繰りは楽になるでしょう。
▷前記1.の「回収サイトの短縮」と「支払サイトの延長」はいわば表裏一体の関係です。
取引先に支払サイトの延長を要望することは、取引先にとっては回収サイトが長くなることになり資金繰りが悪化することに繋がります。取引先の状況もよく考えて取り組まなければトラブルの可能性もありますので要注意です。
以下は、取引先との交渉のポイントです。
1.取引条件の改善依頼をする取引先の現在の状況を慎重に考慮します。
2.新規の取引先には、仕入額と同時に支払条件(長短)を加味して交渉をします。
3.自社の資金繰り状況に応じて、仕入額と支払条件の優先順位を決めます。
③.在庫を削減する。
▷資金繰りを改善するには、「在庫管理」は重要なポイントです。
在庫とは、金がモノになっている状態です。早く売って現金にしなければなりません。
過剰在庫になると、モノの状態で長く寝かせていることになってしまいます。
現金の状態であれば資金繰りにも回せますが、モノの状態では資金繰りには使えませんので、その状態が長引けば資金繰りを悪化させることになります。
銀行の融資を受けている場合は、その在庫を早く売って現金化しないとその間は利息を払い続けて在庫をただ持っているだけということです。資金繰りにも使えませんし、利息の支払というキャッシュアウトのみが発生するということになります。
また、在庫の保管には「倉庫代」はもちろん、そこで働く人の「人件費」も発生しますので、在庫を持ち続けると資金繰りを悪化させる一方になります。
以下は、在庫管理の主なポイントです。
1.在庫をなるべき持たず必要な材料を必要な時だけ仕入れるシステム(ジャストイン)
2.予約販売方式、受注発注方式の導入の検討
3.委託販売方式(返品可能方式)による取引の検討
4.仕入れ担当者に対する在庫と資金繰りの関係の教育
5.在庫ロスの防止対策の検討(整理整頓、期限切れ商品の確認徹底)
6.システムの在庫数字と実地棚卸の在庫数字との相違がないかの確認徹底
④.借入をおこす。
▷借入をおこす~借金をする、融資を受けるということです。
借入とは、使えるお金として現金が入ってくる事ですので、手元資金が増えます。つまり資金繰りにプラスの作用をもたらすということです。
資金繰りにおいては文字通りプラスと言えますが、借入が増えれば金利負担も増加しますので、しっかり財務管理をしなければ借入過多となり、逆に経営を圧迫しかねません。借入は、最適なボリュームで運用する必要があります。
以下は、借入をおこす上でのポイントです。
1.まず、そもそも借入によって資金繰りを回すべきかどうかの判断
2.短期借入にするか、長期借入にするかの判断
3.経常利益の範囲内で収まるような返済額となるように、借り換え等も含めて検討
4.どの金融機関から借りるのか、既存の借入シェアを考えながら取引バランスを考慮
⑤.資産の流動化・現金化
▷すぐには資金繰りに使えない資産があれば、それを売却するなどして現金化することで、手元の資金が増えるので資金繰り安定につながる。
遊休不動産は、固定資産税や維持管理費等のコストが掛かりますのでキャッシュアウトしかありません。すぐにでも売却するなどして現金に換え、それを負債(借入返済)に充て圧縮したり、運転資金の補填などに使ったほうが良いと思います。
現金化により債務返済して圧縮すれば、借入総額が減り同時に利息負担も減らせますし、借入本数が減れば、毎月の元金返済額も減らせます。
以下は、資産の流動化・現金化をする上でのポイントです。
1.会社・個人の所有資産(遊休不動産など)の洗い出し。
2.不動産や有価証券を売却した際のメリット・デメリットの整理(売却益・売却損)
3.不動産、車両(トラック等)のセール&リースバックの検討
4.使用頻度の少なくなった機械設備等の売却の検討
⑥.増資する
▷増資は「自己資本」となるので、負債である融資とは違い返済の必要もない。
資金使途は基本的に自由に使えます(運転資金、設備資金)。手元資金も増え、資金繰りも良くなり、自己資本比率、流動比率、当座比率などの財務指標が向上し、財務基盤も強化され、銀行融資審査にもプラスの作用をもたらします。
増資による資本金の額には注意が必要です。信用保証協会を利用できる企業の要件として資本金の額と従業員数の両面から、企業規模に関する制限が設けられています。資本金額、従業員数のどちらかの条件が合えば利用できるのですが、両方とも制限を超えていると保証の対象外となり、信用保証協会を利用できなくなります。
助成金や補助金についても同じような制限が設けられていますので、増資によって企業規模を大きくしすぎると、返って逆の結果を招いてしまう可能性もあります。
以下は、増資をする上でのポイントです。
1.出資比率による経営権や資本金の額に注意して増資額を検討
2.種類株式(経営権への影響を考慮した株式)の導入の検討
3.第三者から出資(配当期待など)を受ける際のメリット・デメリットについての検討
⑦.適切な節税をする
▷適切に且つ適度に節税をすれば資金の流出を軽減することができ、資金繰りを良くするための重要なポイントになる。
節税の具体的アドバイスは、顧問の税理士さんとよく相談しながら進めていきましょう。税理士さんから節税のアドバイスを受ける際には過度に節税に走らないように心掛けます。
必要以上に税金を払うことで納税によって資金繰りを圧迫することは避けたいところですが、過度な節税は逆に資金繰りを悪化させる一因となり得ることもあります。
節税の1つとして、利益を減らし納税額を抑える方法がありますが、利益を減らすと必然的に財務内容が悪くなることに繋がります。
銀行融資を受けたい場合、節税が過ぎると利益が少ない、または赤字の決算書となりますので、融資を受けづらい財務内容になってしまう結果となります。
なるべくキャッシュアウトの少ないほうがベターですが、財務内容を過度に悪化させないような「バランスの良い節税対策」を税理士さんと相談しながら進めるようにしましょう。
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