令和6年6月に、事業性融資の推進等に関する法律案が成立し、これにより新たな担保制度「企業価値担保権」が創設されました。
企業価値担保権は、一般的な担保対象として活用されていた不動産や動産(有形資産)に加え、事業ノウハウ、特許等の知的財産、顧客基盤、のれん・ブランド等の無形資産を含めた企業のすべての財産つまり「企業価値全体」を担保の対象とする制度です。
これまでの銀行融資の担保においては、不動産担保や経営者保証(社長の連帯保証)に依存していました。
企業価値担保権では、それらに加えて事業の将来性、これから稼ぎ出されるキャッシュフローにも注目しその価値を担保として融資がなされることになります。
そしてそれに伴い、銀行による貸付先企業へのより「緊密な経営支援」が行われることが期待されています。
企業価値担保権を活用することのメリットは、主に4つあります。
①不動産等の有形資産を持っていない企業でも、その事業の将来性・成長可能性を評価できるのであればその事業ノウハウ・顧客基盤等の無形資産をも含めた「企業価値」を担保評価して融資を行うことが可能となります(事業性評価融資)。
②企業価値担保権を活用する場合は、経営者保証の利用が制限される~つまりその範囲の縮小または解除することが可能となります(債務者:企業に粉飾決算等がある場合は除く)。
③銀行が企業に企業価値担保権を設定すれば、その会社の業績が悪化することは担保権価値の毀損につながりますので、銀行としては積極的にその会社の業況を継続的に把握し必要に応じて支援していくことになります。結果的に会社の業況の変化に早めに気づくことができるので、経営改善に向けた支援を迅速に行うことができます。
④銀行が企業価値担保権を設定すると、③の理由でその会社を継続的にモニタリングし事業性を深く理解できますので、万が一苦境に陥り事業再生の局面になったとしても複数の債権者(融資先の銀行等)の調整等を効率的に主導し打開策を練ることが可能となります。
企業価値担保権を活用する場合に想定されるシーンとしては、前述のメリットが期待されますので、以下3点のシーンでの活用が想定されます。
①スタートアップ支援~有形資産が乏しいものの、将来への可能性・成長性が期待されるので融資を受けやすくなります。
②事業承継での局面~経営者保証がネックとなっている場合(承継者がその保証を引継ぐ)にこの制度を活用し、経営者保証を解除することによりスムーズな事業承継を推進します。
③事業再生や経営改善の局面~このフェーズでの無担保融資は極めて困難ですが、企業価値担保権が評価されれば、資金調達にプラスとなり得る可能性があります。
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